Stingの新作とちょい鬱な僕。

新作といっても昨年リリースされた「The Last Ship」はEテレのTEDという番組で、その存在を知ってからの購入である。その番組で知ったのであるが、スティングは前作(2003年)から約10年間スランプに陥り、全く作品が書けなくなっていたらしい。その間、ライブアルバムや来日公演はあったので、TEDで話していたほどのスランプがあったとは、正直驚きであった。そのスランプを乗り越えて発表されたこのアルバムで彼の生い立ちを知ることになったが、亡き父との確執と生まれ故郷からの決別などが過去にあったことなどが作品に散りばめられている。イギリス北部の造船が盛んな町で生まれたスティングは、造船工であった父から造船工になることを勧められるのであるが、「父さんのような不幸になりたくない」と、故郷を捨て、現在があることを「Deadman’s boots(死者のブーツ)」という曲で告白している。
 この「Deadman’s boots(死者のブーツ)」という曲が非常に深い曲である。曲調は「おじいさんの古時計」のような感じで、わざと訛りのあるイングリッシュで歌っているようである。造船工は死者が出ないと工員の募集はなく、死者が出ていないところをスティングの父がわざわざ持ってきた就職話を一蹴したということを歌にしたのであろうか。私なりの解釈であるが、「Deadman’s boots(死者のブーツ)」は本来なら求人が出るのは死者が出た時、すなわち死者の履いていたブーツということになる。それだけではなく、無理やりこの俺にこのブーツを履かせるのであれば、生きる屍(Deadman)になれということだ、と憤りをあらわにしているとも言える。御歳63歳のスティングが何故今になって、父親との確執を歌にするのであろうか。しかも父との確執や故郷からの決別を歌にしようと決めた時、病人が嘔吐をするような感覚で曲が湧いて出てきたと表現していた。これには観客も苦笑いであったが、第三者には分からない彼のセンシティブなナイーブな一面が窺える秀作であると改めて感じました。
 かくいう私は来年で48歳になる。昨年の頸椎症の手術以来、いまだ指先の痺れと麻痺に若干ながら悩まされ、気力でカバーするも、最近元気が出ない日が多く、少し鬱ではないかなと感じることが多くなった。気力で平常心を保とうと思うが、先週は全く気力が出なかった。昨日は近くの山に登り、少し元気を取り戻したけど、最近元気の出ない私の心の糧がスティングの最新作なのでした。