あの少年を悼んで

「神様、彼はそんなに優しい子ではないので、お願いだから彼を傍に置いておこうなんてことは考えないでください。」
これは、長男坊が2歳のときに、脳神経外科のMRIの結果、「くも膜のう胞の形成による脳梁欠損症」と診断されたときのこと。大袈裟な私は、このような聞いたこともない病名で診断された我が子が死んでしまうのではないかと思い、ちょうど予定していた家族旅行先の沖縄の宿で、当時2歳の息子の寝顔を見ながら、自棄酒で泥酔状態になり、心の中で祈るように叫んだ言葉である。私にとっては初めての子供で、当時は無邪気な優しい笑顔の天使であって、こんなに優しい子供だから、神様は私から笑顔の天使を奪い、自分の傍に置いておこうとするんじゃないかと思って、そんなに優しい天使ではなく、普通の子なんですと念じていたことを憶えている。実際、長男坊は神様の傍らに連れていかれずに済んだみたいで、現在も家族の一員である(脳梁欠損症は治らないんですけどね)。
 川崎市の事件は痛ましい事件である。あの少年の遺族の方の胸中を察すると、子どもを持つ親として行き場のない悲しみや憤りを感じずにはいられない。マスコミ報道でしかあの少年の人となりは分からないけど、とても優しく、皆から愛された少年のようだ。神様は、優しい天使のような少年だったから、彼をこんなに早くにその傍らの天国へと連れていってしまったのだろうか。ここに少年のご冥福をお祈り申し上げたいと思います。
文中の「神様」に宗教的な意味あいはなく、私の心の中にある偶像であることを申し添えておきます。

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