尾崎豊の音楽とモスキートーン

テレビで尾崎豊の特集をやっていた。彼の音楽性と生涯を彼の音楽で綴った番組であった。もうすぐ47歳になるが、ちょうど30年前に彼の音楽に衝撃を受けたことを憶えている。自分の過去の恥部を晒すような話しで気恥ずかしいが、高校3年生の学園祭でロックバンドとして演奏する予定であったが、前日に喫茶店で喫煙しているのを学校の教師に見つかり、三日間の停学をくらってしまった(笑)。当然、学園祭には出場出来ず、自宅で謹慎の身となってしまった。バンドメンバーに迷惑をかけた、、、とか学園祭に出られない、、、とかで、失意のどん底にいるときに友人がわざわざ私の自宅に一枚の
LPレコードを持ってきてくれた。それが尾崎豊の「十七歳の地図」であった。レコードに針を落とすと、A面一曲目の「街の風景」が流れてきた。大好きな曲である。すぐに停学中の身であることを忘れ、彼の音楽に陶酔していった。「I LOVE YOU」や「Seventeen’s map」や「Oh,My Little girl」など、彼の音楽がセンシティブな当時の私を圧倒していった。そしてB面最後の曲「僕が僕であるために」が終わる頃にはすっかり彼のファンになっていた気がする。彼は26歳という若さでこの世を去った。十代の気持ちを代弁していた自分自身が大人になっていくことの矛盾に耐えきれなかったのだろう、と私は今でもそう思っている。そんな彼の特集をテレビでやっていたが、47歳になろうとしている今、彼の曲が聴こえてきても懐かしさ以外に感じるものはなかったのが率直な感想である。
 妻がモスキートーンというアプリをダウンロードして私に試そうとしてきた。歳をとるごとにある周波数の音が聞こえなくなってくることを測るアプリなんだとか。息子たちには聴こえる周波数の音が私には聞えなくなっていた。息子たちは音の聞こえない私を不思議そうに見つめながら、そして笑うのであった。ふと尾崎豊の音楽が連想された。そして、歳をとるごとに彼の音楽が聞こえなくなってしまった自分と重ね合わせてみるのであった。

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